半径3メートルの
本を読むのが好きです。
子どもの頃からそうでした。
小学生の頃の休み時間、ひとりで本を読んでいる時間が長かった。
クラスメイトから無視されていた時に僕を救ってくれたのは本だった。
高校生の頃、学校の授業がおもしろくなくて本ばかり読んでいた。
特に数学の授業中は捗った。
大学生の頃、大学には最低限しか行かず、ひとりの時間は本ばかり読んでいた。
心身の調子を崩して泣きながら実家へ帰る時、着替えと一緒に一冊の本をカバンに詰めた。
社会に出てから、本屋で自己啓発書やビジネス書を買い漁った。
仕事がうまくいかなくなると即時的な打開策を求めて本を読んだ。
振り返ってみれば僕にとっての本とは「逃避」だった。
本を読んでいる間は現実から目を逸らしていられる。
本を読んでいる間はそこに書かれていることを完璧にこなせるスーパーマンになっている。
自分には肉体という制約があることを忘れて。
僕の興味は常に現実から離れたところにあった。
世界は広く、自分のいる場所は今ここではない。
本で得た知識や創造された世界に憧れていた。
手の届く範囲をおろそかにしていた。
半径3メートルの、狭いスペース。
僕の手が届く世界はきっとそんな程度。
小さすぎて、思い描いた世界との距離にうんざりするけれど、手の届くところからはじめるしかない。
半径3メートルのリアル。
目をつぶって見ないようにしてきた本当の世界と徹底的に向き合ってみようと思う。
辛くなったら「逃避」すればいいし。